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八木下浩史氏が語る「アニメ制作におけるCGの役割」

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日時:2007年3月11日(日)
場所:WAOクリエイティブカレッジ 講義室

株式会社サテライトのCGチーフディレクターである八木下氏は、WAOの第一期修了生。受講生と対等な立場で、プロの仕事についてくわしく語ってもらいました。

八木下浩史氏が語る「アニメ制作におけるCGの役割」

いまやほとんどの映像作品にCGは当たり前のように使われています。しかし実際の現場でCGクリエイターがどのように制作に関わり、どのような作業が発生するのかはなかなか見えづらいもの。『創聖のアクエリオン』『マクロスゼロ』などで知られる株式会社サテライトはアニメ会社の中でも強力なCGチームを持っており、従来のセルアニメの表現手法とCGをうまく融合させています。今回のセミナーは、株式会社サテライトのCGチーフディレクターとして活躍する八木下浩史氏を迎えてアニメーションの制作現場の実際を語ってもらいました。WAOの第一期修了生でもある八木下さんはカレッジ生の気持ちに理解を示しつつ、対等な目線で現在のお仕事を語ってくれました。

アニメ制作におけるCGの役割

深い理解を得たカレッジ生アニメ制作の基本的な流れの中で、ほとんど全ての工程にCGの打ち合わせは必要とされます。世界観やシナリオ決定後一番最初に行われる“演出打ち合わせ” の段階から参加をし、映像の方向性を決めるそうです。より世界観に近い表現を獲得するために、そしてそれを実現する効率化の面でもCGは重要な位置を占めます。「ほかの映像作品に関わっているときは、作品の中の一部のパートを担当していたのですが、今は作品の根幹に関わっているという意識があります。」と八木下氏。またテレビ放映作品の場合、リアルタイムでオンエアされるので作品と一緒に成長していくことができるのが刺激的だということです。

たくさんの打ち合わせとその目的

終始おだやかな表情でお話しされた八木下氏

決して長いとはいえない制作期間の中で、演出打ち合わせ・作業打ち合わせ・撮影打ち合わせ・CG打ち合わせなど、驚くほど多くの作業が発生します。これらの目的は“人に伝える”“世界観を共有する”こと。 「“飛行機が飛んでいる”といっても、それが速く飛んでいるのか、ゆっくりなのか。戦闘中なのか、移動中なのか。監督が“速い”とイメージしているものは、自分とは違うかもしれない。出来上がってから“違う!”ということがないようにキチンと話し合って詰めていくことが大切です。」 “絵が上手ければいい”ということはなく、ひとつのものを大勢の人が関わって作る以上話し合ってお互いのモチベーションをあげていくメンタルの部分がとても重要視されるそうです。

CGに強い会社だからこそできること

CG制作画面

実際にサテライトで作られている『ノエイン』『ヘルシング』などは、作画とCGを合体させたシーンも数多くあります。セルで描いたものからCGのモデルを作り出し、手作業だと気が遠くなるような根気のいる工程を省略し、より細かいこだわりのシーンが実現できたケースも数多くあるそうです。そのほか修正が比較的容易など利点も数多くあります。 「なんでもかんでもCGにすればいいというわけじゃないんです。アニメのノウハウを生かしつつ限られた納期でいかに効率的な映像を見せるかを提案していくことも僕らの仕事です。そのうえで誰も見たことのない映像をつくりたいですね。」 実際に“見たことのない映像”を現場で説明してわかってもらい実現するのは容易ではありません。現場に関わる人々全員がCGに詳しいとは限らないからこそ相手の意図を汲んでどんなことができるのかという的確なアドバイスをして作品を仕上げていくことが要求されます。

イメージを共有するために必要なこと

動画作品分析

打ち解けた雰囲気の中で「イメージを共有するというのはなんとなく理解できるんですが、実際の距離感などはどうやったらつかめるのでしょう。」と参加者から質問が。 「いまいいことを聞いてくれました!僕もその話がしたかったんです!」 そういって八木下氏は双眼鏡を取り出しました。現場でも双眼鏡を逆にして広角レンズの効果をだして使い10センチ程度の大きさのロボットの模型を見て、監督と話をして距離感をつかむのだそうです。 「大人二人で双眼鏡を覗き込んでああでもないこうでもないといっているのは、はたから見れば遊んでいるように見えるかもしれないですね(笑)。

双眼鏡を覗き込んで実際の打ち合わせを再現

でもこれはとっても大事なことなんです。双眼鏡とロボットを回しますから実際に見てみてください。」 八木下氏から双眼鏡を手渡された参加者が机の上にロボットを置いて覗き込むと「巨大ロボットを上から眺めませんよね?下から覗き込むように見るのが巨大ロボットに対するみなさんの目線です。」と指導が入りました。ちょっとびっくりした様子の参加者に対して八木下氏は続けます。「僕は決して話をするのが得意ではないです。でも監督と打ち合わせするなら、今くらいテンションをあげていかないと相手に踏み込めません。相手の言うことを一方的に聞いてわかった気になるというのは、誤解を生むことはあってもいいものは生まれません。だからこの場でもどんどん発言してコミュニケーションしてください。」

プロとしてものを見る目を養う

デモ紹介では、実際に放映された作品だけではなく、このセミナーのために八木下氏が3Dで作った戦闘機をAfter Effects(2D)上で再現してくれました。「CGの場合モデリングが終わればあとは対象物をフレームに沿って動かすことで、なんとなく映像を作ることも出来ますが、そうやって無計画につくっていてもいい映像はできません。自分でどうしたいのかをキチンと事前に思い描いておくことが大切です。」実際にそれぞれのカットを好みの時間軸に配置し、カメラを固定して戦闘機の軌道を作るプロの作業を見ることができるのは貴重な体験となりました。

絵がうまくなることと絵が見えるようになることは違う

絵がうまくなるというのは“手の作業”であり、絵が見えるようになるというのは“目の作業”だと八木下氏は言います。 「CGをメインツールとする皆さんは絵が上手くなる必要はないんです。絵が“見える”ようになることが必要なんです。対象をどのアングルから見たらかっこいいのか。どの方向から日が当たるとどう影が落ちるのか。人でも物でもまっすぐに立っているものって実はなくて。人ならば体の左右どちらかに重心がかかっているし、車の縦列駐車だって道と完璧に平行になっている車はない。ちょっとしたことなんですけど、リアルに見えるかどうかはそこで決まってくる。そこに気づくことができるかどうかがプロとアマの差だと思います。」

平面の中で奥行きを表現する

動画作品制作の工程

映像という2D空間ではいかに奥行き感を表現できるかということが、もっとも重要です。例えば同じ映像でもカメラのレンズを変えることにより印象は大きく異なります。八木下氏が用意してくれたデモを使って広角レンズと望遠レンズで映像のスピード感にどういった差があるかというのも実際に体験することができました。「広角レンズは目で見るよりも広い範囲を撮影するのに対して、望遠レンズは遠くのものを大きく見せるレンズです。それぞれの映像の醍醐味があるので目的によって使い分けます。」 ほかにも多くの例を取り上げて、“見ていて違和感のない映像=リアルをそのままなぞるということではない”ということを参加者も体験できたのではないでしょうか。 「勢いを感じさせるためには残像効果を加味して映像を作ることもあります。動きのある映像を見て“気持ちよさ”を感じるのがアニメのいいところでもあります。自分にとってどんな動きが気持ちいいのか悪いのかを感じることが大切です。」

セミナーというよりはディスカッション。八木下氏の話は率直で誠実、そして時折現場に真剣に向き合う人ならではの厳しい発言も見られました。そして終始一貫して感じられたのは受講者を自分と対等に扱おうという姿勢。その空気を感じ取ったのかセミナー終了後も八木下氏のまわりには質問をぶつける長蛇の列が出来ていました。

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